住宅は環境医療である 欧州・北米と日本、住まいに対する思想の違い
前号「世界弱者の日本住宅事情」では、日本の住宅が世界基準から大きく取り残されている現実を提示しました。
では、なぜこのような差が生まれたのでしょうか。そして、その差は私たちの暮らしや健康に、どのような影響を与えているのでしょうか。
Vol.02では、「住環境医療」という視点から、欧州・北米と日本の住宅思想を比較しながら、その本質に迫ります。
住宅は、健康を守るための環境である(欧州・北米の考え方)
ヨーロッパや北米では、家の中が寒いことは「仕方ないこと」ではありません。
冬でも家全体が一定の温度に保たれ、廊下やトイレ、寝室までもが同じ温熱環境にある。
家の中で上着を着る必要はなく、移動のたびに体を緊張させることもない。
これは贅沢な暮らしではありません。
人が健康に暮らすための最低条件として考えられています。
この背景にあるのは、住宅を「住むための箱」ではなく、人の健康を守るためのインフラと捉える思想です。
寒さによる血圧変動や体調不良は、個人の体質や年齢の問題ではなく、「住環境の欠陥」として扱われます。
つまり欧州・北米では、住宅そのものが病気を予防する役割を担っているのです。
日本の住宅は、なぜ人が我慢する前提なのか
一方、日本の住宅はどうでしょうか。
- 暖房は部屋ごと。
- 廊下や脱衣所は寒いまま。
- 冬は家の中でも防寒着が必要。
こうした状況が、長い間「日本の家はこんなものだ」と受け入れられてきました。
日本の住宅は、建物そのものの性能で寒さを防ぐのではなく、住む人が我慢することでバランスを取ってきた住宅です。
- 寒ければ着込む。
- 移動は最小限にする。
- 冬は活動量が下がる。
世界が「建物で人を守る」方向に進む中、日本は「人が環境に合わせる」道を選んできました。
この違いは、単なる設計手法の差ではありません。住宅に対する思想の差です。
―JOURNAL VOL.01住環境医療という考え方
住宅の温熱環境は、単に快適かどうかの問題ではありません。
寒い家は、
血圧の乱高下を引き起こし、睡眠の質を下げ、活動量を減少させ、高齢期の健康リスクを高めます。
ヒートショックは、偶然起こる事故ではありません。
住環境が引き起こす環境由来の健康被害です。
医療が「病気を治す」ものだとすれば、住宅は「病気を起こさない」ための環境です。
住まいは、毎日24時間、静かに人の体と人生に影響を与え続けます。
この意味で、住宅は住環境医療と呼ぶべき存在だと私たちは考えています。
欧州・北米と日本、決定的な違い
比較すると、その差は明確です。
欧州・北米では、室温は健康の基準であり、寒さは設計の問題です。
住宅は人を守る存在であり、責任は建物側にあります。
日本では、快適性は個人任せ。寒さは我慢するもの。
住宅は住めればよい箱であり、責任は人側にあります。
この違いが、日本の住宅を「世界弱者」の立場に押しとどめてきました。
日本の住宅は、本当に劣っているのか
答えは、NOです。日本の住宅が能力的に劣っているわけではありません。
断熱・気密・換気を正しく整えれば、築年数の古い住宅であっても、世界水準に近づけることは可能です。
私たちは実際に、築50年の住宅を断熱改修し、新築を超える快適性を実現してきました。
これは奇跡ではありません。正しい選択の結果です。
―JOURNAL VOL.01住宅を、環境医療として再定義する
私たちブラウレーベンは、住宅を「我慢する場所」だとは考えていません。
家は、人の健康と尊厳を守るための環境であるべきです。
世界で当たり前の暮らしを、日本でも当たり前にする。
そのために必要なのは、高価な設備ではなく、住まいに対する価値観の転換です。
日本の住宅が、これからも「世界弱者」であり続けるかどうかは、これからの私たちの選択にかかっています。
住宅を変えることは、人生の健康条件を変えることなのです。